祈るような思いで図書室を覗くと、石野さんはちゃんといた。
あの1年生に教わりながら当番をやっている。
ちゃんときてくれたんだと思い胸を撫で下ろす。
いい加減そうに見えるが、約束はちゃんと守るみたいだ。
しばらく見ていたが、何も問題がなさそうなので、石野さんには声をかけずにそのまま帰った。
家に帰り、夕食を食べ、風呂も入ってそろそろ寝ようかと思って、携帯を見ると10件近くの不在通知が入っている。
見覚えがないそれも全部同じ電話番号だ。
誰だろう?
イタズラ電話か? それとも今流行りの詐欺かなんかの電話か?
家の中ではスマホを自分の部屋の中に置きっ放しにしているので、電話がかかってきてもまったく気がつかない。
犯罪に巻き込まれたくないので、基本的には知らない番号にはかけ直さないようにしている。
今度もかけ直す気はない。
さらにメールも来ていたので、メールを開くと石野さんからだった。
メールには石野さんのメールアドレスと電話番号が書いてある。
その番号と不在通知の番号とを見比べると同じ番号だ。
電話は石野さんからだ。
何か用があるのだろうか? 当番で何かあったのだろうか? あの1年生と喧嘩でもして、もう当番をしないとか言うんじゃないだろうな。
不安な思いで石野さんに電話した。
「もしもし」
石野さんの低い声がした。
「電話もらったみたいだけど……」
こわごわ聞いてみる。
「メール届いた?」
「うん。届いている」
「あのさあ、届いたら届いたって電話をくれるか、メールを送ってくれるのが当たり前じゃないの」
途端に不機嫌な声になる。
「ごめん。スマホを部屋に置いていたから、気づかなかったんだ」
僕は言い訳をした。
「連絡がないから、隆司が書き間違えてて、違う人にメールを送ったり、電話をかけたりしたんじゃないかと思って心配になったじゃない」
自分が送り間違えたり、かけ間違えたりしたという可能性は考えないわけね。
それに隆司って名前呼び捨て? そんなに親しかったけ。
それにどうして僕の名前を知ってるんだ。
「ごめん」
たしかに電話をしなかったのは僕が悪いから謝るしかない。
「それから、どうして今日、先に帰るの? 私は隆司のカノジョだよね? 普通はカノジョが当番終わるまで待って一緒に帰ろうとか思うでしょう?」
そうか。そんなこと考えもしなかった。
そういえば紀夫も引退しているのにカノジョと一緒に帰るためにクラブに顔を出しているな。
「ごめん。女子と付き合ったことがなかったから、そういうことわからなかったんだ」
ハアーと溜息が聞こえた。
「付き合ったことがなくてもそれぐらいちょっと考えればわかるでしょ。ずっと隆司が来るのを待ってたんだよ」
僕のことを待ってたんだ。
本気で付き合うつもりがなくてもやっぱり一緒に帰るのかな?
「ごめん。石野さんが嫌がらせで付き合うって言ってたから。そこまで考えてなかった」
「嫌がらせだろうが、なんだろうが、カノジョであることには間違いなでしょう」
「そうだね」
それはそうだ。
「明日からは一緒に帰るからね」
「うん。わかったよ。ごめんね。石野さん」
石野さんが僕に飽きるまでの辛抱だ。ここはとにかく謝っておくに限る。
「それから、石野さんはやめて。付き合ってるんだから『樹里』でいいよ」
名前を呼び捨てなんてしたら、殴られそうで怖い。
「ええーっ、でも……」
「いいから、呼んで。隆司」
「じゅ、樹里……さん」
「『さん』はいらない。もう一回言って」
なんか厳しい。これは嫌がらせの一環かな。
「樹里」
「それでいいわ。隆司はお昼はどうしてるの?」
「食堂で食べてるよ」
「そうなんだ」
なんで、石野さんはそんなことを聞くんだろう。
「じゃあ、おやすみ。隆司」
「おやすみ。樹里」
電話が切れた。
大丈夫かな?
呼び捨てなんかにして明日、殴られないかな。石野さん怖そうだし。
明日が怖い。
あの1年生に教わりながら当番をやっている。
ちゃんときてくれたんだと思い胸を撫で下ろす。
いい加減そうに見えるが、約束はちゃんと守るみたいだ。
しばらく見ていたが、何も問題がなさそうなので、石野さんには声をかけずにそのまま帰った。
家に帰り、夕食を食べ、風呂も入ってそろそろ寝ようかと思って、携帯を見ると10件近くの不在通知が入っている。
見覚えがないそれも全部同じ電話番号だ。
誰だろう?
イタズラ電話か? それとも今流行りの詐欺かなんかの電話か?
家の中ではスマホを自分の部屋の中に置きっ放しにしているので、電話がかかってきてもまったく気がつかない。
犯罪に巻き込まれたくないので、基本的には知らない番号にはかけ直さないようにしている。
今度もかけ直す気はない。
さらにメールも来ていたので、メールを開くと石野さんからだった。
メールには石野さんのメールアドレスと電話番号が書いてある。
その番号と不在通知の番号とを見比べると同じ番号だ。
電話は石野さんからだ。
何か用があるのだろうか? 当番で何かあったのだろうか? あの1年生と喧嘩でもして、もう当番をしないとか言うんじゃないだろうな。
不安な思いで石野さんに電話した。
「もしもし」
石野さんの低い声がした。
「電話もらったみたいだけど……」
こわごわ聞いてみる。
「メール届いた?」
「うん。届いている」
「あのさあ、届いたら届いたって電話をくれるか、メールを送ってくれるのが当たり前じゃないの」
途端に不機嫌な声になる。
「ごめん。スマホを部屋に置いていたから、気づかなかったんだ」
僕は言い訳をした。
「連絡がないから、隆司が書き間違えてて、違う人にメールを送ったり、電話をかけたりしたんじゃないかと思って心配になったじゃない」
自分が送り間違えたり、かけ間違えたりしたという可能性は考えないわけね。
それに隆司って名前呼び捨て? そんなに親しかったけ。
それにどうして僕の名前を知ってるんだ。
「ごめん」
たしかに電話をしなかったのは僕が悪いから謝るしかない。
「それから、どうして今日、先に帰るの? 私は隆司のカノジョだよね? 普通はカノジョが当番終わるまで待って一緒に帰ろうとか思うでしょう?」
そうか。そんなこと考えもしなかった。
そういえば紀夫も引退しているのにカノジョと一緒に帰るためにクラブに顔を出しているな。
「ごめん。女子と付き合ったことがなかったから、そういうことわからなかったんだ」
ハアーと溜息が聞こえた。
「付き合ったことがなくてもそれぐらいちょっと考えればわかるでしょ。ずっと隆司が来るのを待ってたんだよ」
僕のことを待ってたんだ。
本気で付き合うつもりがなくてもやっぱり一緒に帰るのかな?
「ごめん。石野さんが嫌がらせで付き合うって言ってたから。そこまで考えてなかった」
「嫌がらせだろうが、なんだろうが、カノジョであることには間違いなでしょう」
「そうだね」
それはそうだ。
「明日からは一緒に帰るからね」
「うん。わかったよ。ごめんね。石野さん」
石野さんが僕に飽きるまでの辛抱だ。ここはとにかく謝っておくに限る。
「それから、石野さんはやめて。付き合ってるんだから『樹里』でいいよ」
名前を呼び捨てなんてしたら、殴られそうで怖い。
「ええーっ、でも……」
「いいから、呼んで。隆司」
「じゅ、樹里……さん」
「『さん』はいらない。もう一回言って」
なんか厳しい。これは嫌がらせの一環かな。
「樹里」
「それでいいわ。隆司はお昼はどうしてるの?」
「食堂で食べてるよ」
「そうなんだ」
なんで、石野さんはそんなことを聞くんだろう。
「じゃあ、おやすみ。隆司」
「おやすみ。樹里」
電話が切れた。
大丈夫かな?
呼び捨てなんかにして明日、殴られないかな。石野さん怖そうだし。
明日が怖い。