わたし、クラスメートにどん引きされてたんだね。

 ……これじゃあ、本当のお友達なんて、出来ないよ。

 新しい所に行くのはドキドキするけれど、ここは心機一転。

 普通の公立高校に通って、普通に生活して、クラスメートか、せめて同学年に『本当の友達』を作って来ようかと思うの!

 わたしは、心の中でうなづいて手をぎゅっと握りしめたのに。宗一郎ってば、まだ泣いてる。

「もう、爺の心配性!
 別に独り暮らしさせて、とか言ってるわけじゃないでしょ?
 ただ、学校に行って帰って来るだけよ?」

「……その、通う学校に問題があると申し上げてるのです!」

 涙を拭いてる真っ白なハンカチの隙間から、爺の目がきらりん☆ と光って思わずたじろいだ。

「君去津高校って、公立だけど毎年沢山、有名大学にも受かる進学校だし!
 スポーツ系のクラブのいくつかと、吹奏楽部は全国大会に出た、きちんとした学校でしょ?」

 何の問題があるって言うのよ!?

 なんて、思わず、頬を不満で膨らまして聞けば、爺が深刻そうに答えた。

「……が、通ってるんですよ」

「え?」

「私の孫、藤原《ふじわら》 宗樹《そうじゅ》が、現在!
 君去津高校二年二組に在席していると申し上げているのです!」

 きた~~!

 そう! これよ、これ!

 わたしが数ある公立高校の中で君去津を選んだ理由、これなのよ!

 いくら『頑張ってみよう』って思っても、さ。

 本当に、全く初めてな所に一人でぽーーい、って飛びこんだら、とっても不安じゃない?

 今まで、私立星条学園でずーーっとお世話になっていた関係上。

 どっか遠くに転校しちゃった子以外、わたしの友達も知り合いも全員学園にしかいないのよねぇ。

 だから、いつもお世話になっている爺、宗一郎のお孫さんが通っている高校なら、ちょっとは安心かなって思って。

 ちょーっとレベル高い高校だったけど、受験、頑張ってみちゃったの。

 あ、でも!

 宗一郎のお孫さん……宗樹と会ったのは小さい頃の一、二回ぐらいで、最近全然会ってないんだよ?

 一番の目標が『普通の学校で、特別扱いされない』ってことだから、宗樹に何か頼ることなんて、ないはず……よっぽどの、緊急事態が起こらない限り。

「……で、どーして宗樹と一緒の学校だと問題なの?」

 わたしは安心なのにって首を傾げたら、爺は改めて出て来た涙をぐぃ、と拭いて言った。