舗装された道路から外れて少し歩くと、石段があった。
 かなり時代もので、段がところどころ欠けている。
 石段を何段か上る。両側に苔むした丸い石が見えてきた。
 石の真ん中が、丸く穿たれている。きっと、鳥居の台座だったのだろう。

 更に数十段上る。高さにして、三十メートル程だろうか。少し平らな場所に出た。
 ここが台地の頂上らしい。
 この台地の見える範囲に、神社らしき建物は見当たらない。
 この台地の中に、高さ数メートル、半径三十メートル程の丸い丘陵がある。
 この丘陵が、猯穴古墳の本体なんだ、きっと。
 では、猫守神社は何処に? と辺りを探す。
 石の階段が見つかった。この台地まで登ってきた石段より、更に古そうだ。
 丘陵の頂上に、おおきな欅の木が二本、絡まるように立っており、石段はその根元
まで続いている。
 三笠君と一緒に石段を登る。
 丘の頂には、二本の木に巻き込まれ、埋まるようにして、小さな祠があった。

「これが、猫守神社の本社ね。じゃぁ、この近くに隠れ家があるって、事よね」
「そうだね。きっと、近くに入り口があるんじゃないかな」
 三笠君の発案で、祠を中心に隠れ家の入り口を探す。

 けれど、一時間以上探索を続けても、それらしい物は見当たらない。
 ここに着いた時は、直ぐ見つかるつもりでいたけど、だんだん焦り始めてくる。
「見つからないね。本当に隠れ家って、この近くなのかな」
 ついつい弱気な発言になる。
「近くだと思う。きっと、簡単には見つからない。何か、仕掛けがあるんだ」
「仕掛け?」
「濱野さんが、仁連屋の猫守神社からネコモリサマの所に行ったのは、何が切っ掛け
だった」
「あの時は、猫守神社に手を合わせて、『翠を人間に戻して』ってお願いした」
「じゃぁ、もう一度同じ事をしてみよう」