木の茂みに挟まれた向こうに、人の胸の高さほどの祠がある。
 思いのほか新しいようだ。
 正面に観音開きの扉がある。格子の向こうに御神体があるのだろうが、暗くて
よく見えない。
 祠の両脇には、狛犬があるが、よくよく見れば犬ではなく猫の顔をしている。

「これが、猫守神社?」
「そう。昔は、もっと広い境内があったんだけど、再開発でここに移されたんだよ。
仁連屋さんの先祖も、元は神主さん兼務だったらしい」
「三笠君、詳しいね。なんで、そんなことまで知ってるの?」
 と素朴な疑問を口にする。

「さっき、民間伝承が好きだって言ったろ。猫守神社は、小学生の頃に先生に聞いて
たんだけど、高校生になってから自分で色々と調べてみたんだ」
「そうなんだ」
「そして、仁連屋さんに行き当たった。猫守神社の由緒については、仁連屋の社長。
素子さんのお父さんにあたるんだけど、その人から話を聞けたんだ…」
 三笠くんは、そこで意味ありげに言葉を区切る。
 私は、ゴクリと唾を飲み込み。
「じつは、猫守神社の由緒話と濱野さんの話が驚くほど似てるんだ」
 そういって、三河くんが話してくれた猫守神社の由緒話は、次のような話である。