「この間の小テストは自信ないんだよね」

そう言うと、剛くんは白い歯を思いっきり見せて笑う。なんて意地悪なんだろう、と思いながら私も笑う。

「いい加減にしなよ。あんたほんと性格悪いよね」

真梨の声にようやく剛くんは、

「んだよ」

と自分の席へ歩いていってくれた。

いつだって真梨は、私を助けてくれる友達。頼りになるし、そしてやさしい。

真梨と仲良くなったのは、入学式の日。たまたまトイレで一緒になった時に話しかけられたことがきっかけだったと思う。

つき合ってわかったのは、真梨は『ウワサ話が大好物』ということ。

だけど、『まんなかまなか』みたいな人をバカにしたような話には、相手が男子であろうと猛然と抗議をする正義感の持ち主だ。だから真梨だけは、何度私が平均点をとってもそのあだ名で呼ぶことはなかった。

「優子の話なんだけどさ」

少し顔を寄せて言う真梨に首をかしげた。

「優子? ああ、武田さんのこと?」

「うん。最近、おかしくない?」

ウワサ話がはじまる時は、たいていこうやって声をひそめてくる。

武田優子さんは、二年生になってからのクラスメイト。三つ編みにメガネの武田さんは、風紀委員に立候補したくらいの真面目な子といった印象。もちろん成績も、入学以来トップクラスをキープしているらしい。