「ちょっと、聞いてる?」

「あ、ごめん」

真梨の声に、ハッと思考から抜け出した。

「もう、本当に茉奈果は人の話聞かないんだから」

呆れ顔の真梨にシュンと肩をすぼめると、しょうがないなあと笑ってくれたのでホッとした。同い年ながら、ひとりっ子の私にとって真梨はどこかお姉さんのような存在だ。

「まんなかまなか、なにかやらかしたのか?」

ニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべて近づいてきたのは、今井剛くん。
高校に入って、やっと『まんなかまなか』の呪縛から解放されると思ったのもつかの間、地元の高校では見知った顔も多い。そのなかでもしつこくその名を呼んでくる剛くんには、中学時代から何度も泣かされた。

「剛うるさいよ」

私の代わりに文句を言ってくれる真梨にも動じた様子を見せず、

「またなにか平均点とったのかと思った」

なんて言ってくる。そんな時私はヘラヘラと笑う。意識したわけじゃなくて、勝手に笑顔になってしまうのだ。