幼なじみの公志は、今日も私の気持ちなんて知りもしないでからかってくる。
家が近所というだけじゃなく、小学校から高校までずっと同じ学校で、昔から家族ぐるみ のつき合いが続いている。

また身長が伸びたみたい……。
そんなことを思いつつプイと前を向いてみせる私に、公志はクスクスと笑っている。 坊主頭で泣き虫だったくせに、いつの間にか青年へと成長した公志。サラサラの黒髪に、笑うとカーブを描く目。
三歳の頃からの仲だから、私の片想いももう十四年になるんだな……。

よくこれだけ長い間想い続けられるものだと自分でも感心してしまうけれど、気がついたら公志のことが好きだった。

最近では公志のことを考える時間が多くなっていて、平気な顔で会話するのも難しい。からかい合ってゲラゲラ笑うのも、どこか意識して演じている自分がいる。つき 合いが長くなるにつれて、素直になれなくなっているみたい。

公志は仲のいい男子が教室に入ってきたとたん、

「おい、昨日のメール意味わかんねぇよ」

と、身軽にそっちへ行ってしまった。

話ができたうれしさの後には、いつも切なさがひょっこり顔を出す。その後は、おかしな態度を取らなかったか、ひとりだけの反省会が始まるのだ。
うしろ姿なら気にせずに眺めていられるのにな……。