深く考えると眠れなくなりそうで、公志が帰ってすぐに私は眠った。

翌日のテストは、中途半端な勉強のわりには解ける問題が多かった。

テストが終われば解放感に包まれ、夏休みはもうすぐ。それなのにこんなに気が重いのは、これから武田さんに話をしなくちゃいけないから。

午前でテストが終わり、はしゃぐクラスメイトの間を縫って最前列の席へ急いだ。

「武田さん」

声をかける私に、武田さんは目を大きく見開いた。

「少し、話がしたいの」

「……ごめんなさい。今日はダメなんです」

ガタッと立ち上がる椅子にも動揺が表れている。

「少しだけでいいんだけど。なんなら話をしながら帰ってもいいし」

明るい口調を心がけても、緊張してしまい笑みは浮かべられなかった。そんな私に、武田さんはもう答えることなく、カバンを手に取ると教室から出ていってしまう。

やっぱり拒絶か……

武田さんの家は知らないし困ったな……。

ふと、真梨の顔が浮かんだ。

「ねぇねぇ」

自分の席に戻ると、劇の台本をじっとにらんでいる真梨がそこから目を離さずに、

「なあに?」

と、尋ねた。

「情報通の真梨に聞きたいことがあるんだけどさ」

バサッ

私の言葉に伏せられた台本。背筋を伸ばした真梨は大きくうなずくと私に顔を寄せて小声で尋ねた。

「どのような情報でしょうか?」

まるで刑事ドラマに出てくる情報屋といわれる人みたい。

「武田さんの家がどこにあるか知ってる?」

数秒の間、じっと私の顔を見てから真梨は唇を上げて目を細めた。

「そんな簡単なこと、あたしが知らないわけないでしょ」

「さすがだね」

感心する私に、真梨はスラスラと住所を口にするものだから、慌ててペンとメモ帳を取り出した。