「毎日雨ばっかりだね」

島田真梨が話しかけてきた時、私は窓の向こうで糸のように落ちる雨を見ていた。

「おはよう。ほんとだね」

湿気で広がる髪を押さえながら顔を向けると、横顔の真梨は

「だね」

と恨めしそうに梅雨空をにらんでいる。

ついこの間高校生になったと思ったら、もう二年生の初夏。最近では、会話のなかで『受験』をにおわす大人も増えていて、空と同じように気持ちも重くなることが多い。

「浜松市の梅雨って、他に比べて長い気がしない?」

「えー?   他のところも一緒じゃないの?」

質問に素直な意見を述べただけなのに、真梨はぶすっとした顔になった。

「絶対に長いよ。ほら、静岡県って横に長いでしょ。それがきっと影響してるんだよ」

よくわからない持論を繰り出す真梨に、

「そうかもね」

と、しょうがなく同意するけれど、梅雨なんてどこも一緒じゃないの?

「茉奈果はもう、進路決めたの?」

どすん、と前の席に腰をおろして尋ねる真梨に、

『大人だけじゃなく友達までもか』

と、今度は私がしかめっつらになる。