信じられない。私が休んでいるのを気にして電話をくれたのなら、余計なお世話だ。
普段なら思いもしない冷たい考えにギュッと目を閉じた。

着信音がうるさくて耳をふさぎたくなる。鳴りやまない雑音に、スマホの横にあるボタンを長押しして電源ごと落とした。

やっと少しずつ向き合おうと思えたところだったのに、今武田さんと話すのはつらすぎる。 逃げるように一階に降り、シャワーを浴びてから気づく。今、この家のなかには私しかいない。

「そっか、今日は日曜日だっけ」

私の両親は、毎週日曜日になると夕方からデートに出かけてしまう。

お母さんに一目ぼれしたお父さんは、何度断られても告白し続け、ようやく結婚したそうだ。今ならストーカーと思われそうな武勇伝をもう何度聞いたことか。

そのせいか、いつまでたっても恋人のようにラブラブだ。 たったひとりの娘を置いて行ってしまうなんて……とも思うけれど、今はひとりでよかったと思うのもたしかなわけで。
作っておいてくれた夕食をとりながら、しばらく自分の想いと向き合った。

さっきの衝動的な自分の行動が思い出される。傷ついているのはたしかだけれど、武田さんが悪いわけではないのに……。

「なんだか……悪いことしたな」

ようやくそう思えたのは、部屋に戻ってしばらくしてからのこと。

投げ出されたスマホを手に取ると、電源を入れた。起動している間に、深呼吸をする。
武田さんと、ちゃんと話そう。私の気持ちはバレていないはずだし、今思えば普通に対応すべきだった。