「ウソでしょう……」

二階は信じられないほどの物であふれていた。
折り重なるように積まれているのは、衣装ケースやらたくさんの本。どれもがホコリをかぶっていて、少し動かしただけでモワッと煙が生まれた。
隣の部屋には机やら、いつのものかわからない電化製品もある。おそるおそる階下をのぞき込むと、待ち構えていた千恵ちゃんと目が合った。

「これ、全部運ぶの?」

「何日かに分けてもいい。時間はたっぷりあるからね」

「げ……」

「ほら、早くしなさい」

さっき感じたやさしさなんてウソのように、ニヤリと笑う千恵ちゃん。
これは大変な日曜日になってしまった。
しょんぼりと部屋に戻り、手前の本から運ぶことにした。

見るといつのものかわからない本たちばかり。空っぽの段ボールを見つけて、そこに次々に詰め込んでいく。難しそうな経済の本やら分厚い小説など、いろんな種類の本が積み重なっている。

「あれ……」

さっきの千恵ちゃんの姿に違和感を覚えて、手を止めた。階段の下に立っていた千恵ちゃんは、杖を手にしていた気がする。

「いつからなの……?」

大股でスタスタ歩いていたはずなのに、いつの間に具合が悪くなったのだろう?
それほどここにきていなかったのかと反省しながら、作業を再開した。