「二階だよ。足が悪くなってから階段を上がれなくなったから、必要な物がおろせなくなったんやて。さすがは蛍さんだね」

滅多に人を褒めない千恵ちゃんがいちばん気に入っているのは、昔からずっと嫁であるお母さんだ。

「蛍さんもくればよかったのに」

「今日は町内会の掃除だってさ。お父さんはまだ寝てる」

「嘆かわしい。できそこないの息子を持ったもんだよ」

灰皿にタバコを押しつけると、千恵ちゃんはパチンと手を叩いた。

「じゃあ、ひとつずつ上から物を運んでちょうだい。いるものなら一階に設置して、 いらないものは粗大ゴミにするから」

「はーい」

軽くなった気持ちで答える私。それを後悔するのは、それからすぐのことだった。