「さすが梅雨ね。ずっと降ってばかりよ」
なにも言っていないのにお母さんはそう言って、グラスに入ったスポーツドリンクを手渡してきた。喉が渇いていたことを思い出し、ひと口飲むと冷たさが心地よかった。
「夜ご飯は食べられそう?」
少し心配そうな顔になるお母さんを安心させたかったけれど、屋根を叩く雨の音が気持ちを揺さぶっている。身体が元気になった分、心の悲鳴がさらに大きくなっているみたいだ。
「あとで食べてもいい? まだ眠くって」
明るい口調で言ってから、逃げるようにベッドにもぐり込んだ。そうしないと涙があふれそうだったから。
「わかった。じゃあチンして食べてね。おやすみなさい」
「おやすみ」
部屋の明かりが消され、ドアが閉まる音がする。パタパタと遠ざかる足音が聞こえなくなってから、ようやく私は泣いた。
声を抑えようとしてもダメだった。公志と武田さんがつき合っている。その事実が波のように何度も私に打ちつけてくるようで耐えられなかった。
身体中の水分が出るくらい泣いて、気づけば眠りに落ちていた。数時間で起きては、 また涙と戦って、そして負けることを繰り返すだけだった。
夢ならいいのに。夢だったなら、笑って済ませられるのに。
でも、あの日言われた言葉はどう考えても実際に起きたことで、壊れた音響のように何度もリフレインしている。
私の身体で。頭で。壊れた心で。
カーテンのすき間から訪れる朝を知っても、悲しいだけだった。
なにも言っていないのにお母さんはそう言って、グラスに入ったスポーツドリンクを手渡してきた。喉が渇いていたことを思い出し、ひと口飲むと冷たさが心地よかった。
「夜ご飯は食べられそう?」
少し心配そうな顔になるお母さんを安心させたかったけれど、屋根を叩く雨の音が気持ちを揺さぶっている。身体が元気になった分、心の悲鳴がさらに大きくなっているみたいだ。
「あとで食べてもいい? まだ眠くって」
明るい口調で言ってから、逃げるようにベッドにもぐり込んだ。そうしないと涙があふれそうだったから。
「わかった。じゃあチンして食べてね。おやすみなさい」
「おやすみ」
部屋の明かりが消され、ドアが閉まる音がする。パタパタと遠ざかる足音が聞こえなくなってから、ようやく私は泣いた。
声を抑えようとしてもダメだった。公志と武田さんがつき合っている。その事実が波のように何度も私に打ちつけてくるようで耐えられなかった。
身体中の水分が出るくらい泣いて、気づけば眠りに落ちていた。数時間で起きては、 また涙と戦って、そして負けることを繰り返すだけだった。
夢ならいいのに。夢だったなら、笑って済ませられるのに。
でも、あの日言われた言葉はどう考えても実際に起きたことで、壊れた音響のように何度もリフレインしている。
私の身体で。頭で。壊れた心で。
カーテンのすき間から訪れる朝を知っても、悲しいだけだった。