ピピピ……

軽い電子音にうっすらと目を開けると、自分の部屋の天井が見えた。少し考えてから思い出す。 そっか、熱を測っていたんだっけ……。

脇に挟んでいた体温計を取り出すと、目の前に持ってくるよりも先に横にいたお母さんに奪い取られる。

「三十六度。もう大丈夫ね」

「うん」

さっき一度起きた時、のどの痛みも寒気も消え去っていたからそんな気はしていた。
額に手を当てると、すぐにあの雨の日の出来事が浮かびそうになり、目を閉じた。

涙が出ない理由は、自分でもなんとなくわかっていた。あの後ひどい寒気とともに高熱を出してしまい、それどころじゃなかったからだ。
だけど、今は悲しみが心を侵食しているようで、違う意味で息が苦しい。

「今、何時?」

ベッドの上に身体を起こすと、ずっと寝ていたせいか身体中が痛い。

「八時よ」

「朝の?」

きょとんとして尋ねると、お母さんは「ふふ」と口のなかで笑った。

「夜の八時。明日は日曜日だから安心して寝てなさい」

「うん」

二日間も寝込んでいたんだ……。きっと真梨は心配しているだろうな。
――公志はどうなのだろう……。
耳に雨の音が聞こえ、頭を軽く振った。