十分ほど歩くと常盤町の交差点に差しかかる。雨のせいか、いつもは見えているアクトシティという浜松市を代表する高いビルも霞んでいる。
まだ午後五時前だというのに車は渋滞していて、信号待ちの時間も長く感じた。

横断歩道を渡って細い道をしばらく行けば、一軒家が立ち並ぶ地帯がある。その道沿い に公志の家があり、数軒先が私の家。
雨のせいで町は色を失くしたかのよう。まるで今の私の気持ちを表しているみたい で悲しくなる。

こんな気持ちのままじゃダメだと、信号が青になる前に自分に言い聞かせた。少し 傘を上向きにして歩き出そうとしたその時。

交差点の向こう側に、さっき出ていったはずの公志が立っていた。黒い傘を右手でさし、反対側の手にはコンビニの袋がぶらさがっている。
なんだ、とホッと息を吐いた。
用事って、部室への差し入れだったのか……。

さっきは冷たい態度をとっちゃったし、なにか話しかけよう。けれど、反省を胸に歩き出した足がすぐに固まった。