放送部に所属している公志は、お昼の放送を担当しているのでこれからが忙しい時間。放送室に入り、大慌てで本番直前の打ち合わせをするのだろう。人気コーナーがたくさんあって、なかでも今日の『アルコールランプ占い』は先生にもファンが多いらしい。

「お昼だー」

振り返った真梨が、三段重のお弁当箱と牛乳のパックを私の机に置いた。これだけの量を食べてもスタイルのいい真梨がうらやましい、と思いながらコンビニのパンをカバンから取り出した。

「今日はお弁当じゃないんだ?」

不思議そうな真梨に、私は唇をとがらせる。

「お母さん、寝坊したんだよね」

「また? ほんと高橋家は茉奈果を筆頭によく寝る家族だねぇ」

クスクス笑いながら食べ始めようとする真梨に、コンビニでもらった使い捨てのおしぼりをひとつ渡した。

なにもかもが平均点の私でも、たったひとつ平均以上なのは睡眠欲だろう。
確実に親の遺伝子を受け継いでおり、我が家は日曜日ともなれば昼過ぎまで誰も起きてこないほどよく眠る。他の家がそうじゃないと知った時は、本当に驚いた記憶がある。

――そうだよ、なにもかも平均点じゃないんだから。
もう百回は自分に言い聞かせている言葉を頭に浮かべると、パンの袋を破った。