自分のことで精一杯で、他のクラスメイトの行動まで観察している余裕がない私。 あいまいに首をかしげていると、

「あ、それより宿題やらなきゃ」

と、急に思い出したのか急いで身体を前に向けた真梨に、聞こえないようにため息をこぼした。

真梨との会話のなかで唯一困るのが、このウワサ話。私は、どちらかというと人の ウワサ話は苦手だから。

『茉奈果、また平均点だったんだって』

『さすが、期待を裏切らないよな』

『まんなかまなか、健在!』

今もまだ耳に残るいくつかの声。ウワサやからかいが、人を傷つけることなんて知りもしない無邪気な笑顔。

彼らに合わせて作り笑顔をしていたあの頃と、私はなんにも変わっていない。どんなに努力しても平均点しかとれない私のことなんて、公志の目には映ってないんだろうな……。

いつの間にか壁側に移動していた公志は、男子グループと楽しそうに話をしている。
輪の中心にいる彼はいつも輝いていて、つい目で追ってしまう。本当におかしそうに笑う声は、スマホアプリの話で盛り上がっているみたい。
朝のざわめきのなかでも、公志の声だけはクリアに聞こえてくるから不思議。