「おかしいって、なにが?」
尋ねながら見回すと、当の武田さんがカバンを両手に持って教室に入ってくるところだった。律儀に頭を下げてクラスメイトに挨拶をすると、最前列の席に座った。
背筋をピンと伸ばして、まだ誰もいない教壇に向かっている。ウワサでは良家のお嬢様らしい。
視線を戻すと、目の前に真梨の顔があったので思わず身を引いた。
「ちょっと、近いって」
「あの子、最近帰るの早くない?」
気にした様子もなくヒソヒソ声で尋ねてくる真梨に、「そうだっけ?」と私まで小声になってしまう。
「いつもいちばん最後に帰ってたのに、最近は授業が終わったら急いで帰るもん」
「用事があるんじゃない?」
「特に木曜日は急いでる感じでさ、なんか怪しいんだよねぇ」
ゴシップ好きの真梨らしく、私に同意させたいようだけれど、記憶をたどってもそんな印象はなかった。
尋ねながら見回すと、当の武田さんがカバンを両手に持って教室に入ってくるところだった。律儀に頭を下げてクラスメイトに挨拶をすると、最前列の席に座った。
背筋をピンと伸ばして、まだ誰もいない教壇に向かっている。ウワサでは良家のお嬢様らしい。
視線を戻すと、目の前に真梨の顔があったので思わず身を引いた。
「ちょっと、近いって」
「あの子、最近帰るの早くない?」
気にした様子もなくヒソヒソ声で尋ねてくる真梨に、「そうだっけ?」と私まで小声になってしまう。
「いつもいちばん最後に帰ってたのに、最近は授業が終わったら急いで帰るもん」
「用事があるんじゃない?」
「特に木曜日は急いでる感じでさ、なんか怪しいんだよねぇ」
ゴシップ好きの真梨らしく、私に同意させたいようだけれど、記憶をたどってもそんな印象はなかった。