ぴぴぴぴぴぴ、奇妙な音で目が覚めた。ハッと身体を起こして、瞬間的に自分の家じゃない場所にいるのだと悟る。だって布団がなく、辰雄も三千代もいないから。代わりに、めちゃくちゃにやわらかいものの上に私の身体は寝かされていた。
目に入るものすべてが、さっきの女の子と同様、不思議な形をしていた。机、ぬいぐるみ、窓を覆う赤い格子柄の布。枕元でぴぴぴぴぴぴ、とがなり立てている平べったい小さな四角い機械を手に取り、なんとか音を止めようとする。「スヌーズ」なんて書いてあるけど、スヌーズって何? 白く縁取られた真っ黒い部分をいじくりまわしていると、やがて音が消えた。
立ち上がり、改めて自分の身体を点検する。すらりと長い腕、脚。さっきの女の子と同じ格好だった。壁に暦が貼ってあり、数字がずらりと並んだその上に四桁の数字がある。2015。これは西暦だろうか。
まさか、と思って窓に走り寄りカーテンを開けると、夏の日差しと一緒に初めて見る世界が目に飛び込んできた。まず目の前に建っている家が違う。青い屋根も車庫に停まっているつるんとした妙な形の車も、玄関を彩る濃い桃色の花も、すべてが見慣れないものだった。自転車がなめらかな動きで道路を走っていくけれど、それに乗っている人の恰好もおかしい。
へなへなと崩れ落ちそうな身体を立て直し、部屋の中に目を移す。ふと、机の上に鏡を見つける。そこには私じゃない顔が映って、ぽかんとした表情を浮かべている。
長い髪、やや釣り目気味の目、ぽってりとした唇。
これは、私ではない。さっきの女の子だ。
本当は思いきり叫びたかった。どうしていいかわからなくて、不安しかなくて。
私はどうやら、違う世界に来てしまったらしい。それもおそらく、さっき夢で見た女の子の姿になって。
目に入るものすべてが、さっきの女の子と同様、不思議な形をしていた。机、ぬいぐるみ、窓を覆う赤い格子柄の布。枕元でぴぴぴぴぴぴ、とがなり立てている平べったい小さな四角い機械を手に取り、なんとか音を止めようとする。「スヌーズ」なんて書いてあるけど、スヌーズって何? 白く縁取られた真っ黒い部分をいじくりまわしていると、やがて音が消えた。
立ち上がり、改めて自分の身体を点検する。すらりと長い腕、脚。さっきの女の子と同じ格好だった。壁に暦が貼ってあり、数字がずらりと並んだその上に四桁の数字がある。2015。これは西暦だろうか。
まさか、と思って窓に走り寄りカーテンを開けると、夏の日差しと一緒に初めて見る世界が目に飛び込んできた。まず目の前に建っている家が違う。青い屋根も車庫に停まっているつるんとした妙な形の車も、玄関を彩る濃い桃色の花も、すべてが見慣れないものだった。自転車がなめらかな動きで道路を走っていくけれど、それに乗っている人の恰好もおかしい。
へなへなと崩れ落ちそうな身体を立て直し、部屋の中に目を移す。ふと、机の上に鏡を見つける。そこには私じゃない顔が映って、ぽかんとした表情を浮かべている。
長い髪、やや釣り目気味の目、ぽってりとした唇。
これは、私ではない。さっきの女の子だ。
本当は思いきり叫びたかった。どうしていいかわからなくて、不安しかなくて。
私はどうやら、違う世界に来てしまったらしい。それもおそらく、さっき夢で見た女の子の姿になって。



