夢だ、という事だけがわかっていた。

 白いのか黒いのかわからない、光なのか闇なのかわからない、不思議な空間にあたしはいた。夢だとわかったのは、こんな空間、現実じゃありえないから。天井がなければ床もない、そんな世界に存在してるって事は、夢を見ているか、あるいは死んでいるか。でも死んだ覚えはないんだから、夢に違いない。

 目の前に、女の子がいた。背は莉子と同じくらい。ちょっと小さめで、髪の長さはあたしより五センチくらい短い。化粧っ気がないしどこか垢ぬけないけれど、なかなか可愛らしい顔をしている。良く言えば、ナチュラル系。悪く言えば、昭和くさい。服なんかむしろ大正時代で、着物を着ている。たぶん浴衣、昔の寝間着。

 その子はあたしのほうを不思議そうに見ていた。表情から、お互いに同じ事を思っているのがわかる。

「誰……?」

 ふたりの声が、重なった。どちらからともなく手を差し出す。

 ふたつの手の間から、光の玉が溢れる。真っ白い光が眼球を直撃して、たまらず目をつぶった。それでもまぶたの裏側まで光は追いかけて来た。衝撃が全身を駆け抜ける。ゴムボールの中に閉じ込められて、超速度でシェイクされているみたい。何なの。この、夢――そしてあなたは。