壁の時計が十一時を回った頃、ひとつ深呼吸して立ち上がった。鍵を外してベランダに出ると、一月の冷たい風があたしを迎える。寒い。寒すぎる。
でも、寒いって感じるのは、生きてる証拠だ。死んでしまえば、何も感じなくなるんだから――。
遺書を持ったまま外に出ちゃったことに気づき、手すりの前でスリッパを揃えて脱ぐと、封筒をその下に置いて重しにした。氷みたいに冷たい手すりをよじ登り、鉄柵の外側に足を下ろす。後ろ手でしっかりと冷たい鉄の塊を掴んで、そのまましばらく、夜景を眺めていた。
でも、寒いって感じるのは、生きてる証拠だ。死んでしまえば、何も感じなくなるんだから――。
遺書を持ったまま外に出ちゃったことに気づき、手すりの前でスリッパを揃えて脱ぐと、封筒をその下に置いて重しにした。氷みたいに冷たい手すりをよじ登り、鉄柵の外側に足を下ろす。後ろ手でしっかりと冷たい鉄の塊を掴んで、そのまましばらく、夜景を眺めていた。