「……っと、こんな感じかな」

 独り言をつぶやいて、ブルーの水玉柄の便箋を二階折り畳み、お揃いの封筒に入れた。

「遺書」って書く時、漢字を思い出せなくて携帯で調べた。「いしょ」じゃあ、なんかカッコ悪いし。

 ドアの外でお母さんの声がする。

「安音―。お母さん、もう寝るわよ。お風呂、さっさと入っちゃいなさい」

「はーい」

 まもなく遠ざかっていく、聞きなれた足音。もうお母さんのうざい小言に悩まされることもなければ、大好きな手作りコロッケも食べられない。そう思うと、少しだけ寂しくなった。

 そのまま椅子に座って、ぼうっとして。家族が寝静まるのを待つ。