「おかえり」

「ただいま帰りました!」

「ひかりも、おかえり」

「えっと……ただいま」

「コン、材料は台所へ。猪俣様はお元気だったか?」

「ええ、相変わらずでございました」


お屋敷に着くと、雨天様が優しい笑みで出迎えてくれ、台所に向かいながらコンくんの話を楽しそうに聞いていた。
その様子を見て、ますます不思議な気持ちになってしまう。


コンくんいわく、実は雨天様と猪俣さんは会ったことはないのだとか。
理由は、雨天様はお屋敷の敷地内から出られないし、猪俣さんはお屋敷の場所を知らないから……らしい。


ここにはコンくんの声に呼ばれれば来ることができるとはいえ、簡単に足を踏み入れられる場所じゃないとは聞いている。
そして、必ずしもコンくんの声が聞こえるわけじゃない、とも。


ただ、猪俣さんに関して言えば、代々このお屋敷との縁があるのだし、なによりもコンくんの姿が見えるのだから、お屋敷に来られそうなものなのに。
コンくんに尋ねてみたところ、それとここに入れるというのはまた別の問題らしい。


なんだか納得できるようなできないような、なんとも言えない気持ちだったけれど……。
用意されていたおいしい昼食を食べている間も、雨天様がコンくんに色々と訊いているところを見ると、そういうものなんだと納得するしかなかった。