でも顔を出す程度ではシフト表は視界にさえ入らない。振り向かなければならないからだ。

 なかなか事務所に顔を出すタイミングが見出せなかった私だが、桜木がホールをウロウロしているのを確認して、シフト表を確認した。

 表には田中伊織の名前が2つ。区別するために、名前の後に男と女と記されていた。

 彼は基本、月、木、金曜日にバイトを入れている。ちなみに週末は入ったり入らなかったりだ。

 ならば二日に一度は顔を合わせそうなものだが、バイトに入る時間帯が概ね遅い。私が早くバイトを上がる時には入れ違いになる場合もある。だから、あまり見かけない印象を持ったのだと知った。

 それでも彼がバイトに入っている日の、しかも遅めの時間帯になると、私は無意味に厨房に入ることが増えた。

 お客様に出し忘れた品物がカウンターに置き忘れてないかを確認したり、ビールやグラスワインなどを片付けてみたり。

 あわよくば彼と目が合ったりしないだろうかなんて、まるで小学生や中学生が想像するような乙女な展開を期待してしまっている。