４月に入り、今日もまた手紙を書いた。

　拝啓、日増しにに暖かくなってまいりましたねという書き出しの後、近況を記していく。

　最初グズっていた美桜もすっかり幼稚園に馴染んだこと。お遊戯会で振り付けを一人だけ間違えていたこと。私の近況も少しだけ添え、お体にお気をつけくださいという言葉で締めくくる。

　いつもどおり美桜の写真を同封して封筒を閉じた。よしと声が漏れた時に、外から美桜の笑い声がまた聞こえてきた。
　
　私は立ち上がり、カーテンを少し開けて、娘の姿を目を細めて眺めた。性懲りもなく、またレオと追っかけっこをしている。

　最近思うことがある。佐藤はやはり事件のことを調べた探偵の佐藤と同一人物で、さらには母とも繋がっていたのではないかと。

　私の部屋のポストのみに投函された"新しい人生を始めてみませんか？　"のチラシも、母と佐藤が共謀したものであれば納得がいく。母は復讐を企てていて、殺人犯の娘にしないためにも、私を赤の他人にする必要があった。