もし、事件のことを知っていたら。怖気づきそうになる。若者が何歳くらいかは聞いていないが、少なくもと島の老人よりもインターネットに詳しいだろう。

　しかし狭いコミュニティだ。すぐに顔を会わせる機会が訪れるかもしれない。それまでドキドキして暮らすのも正直辛い。

　結果が同じならば胡桃山の姓を名乗って、相手の反応を見るのもいいかもしれない。何の反応もなければこの先、安穏と過ごすことができる。

　万が一、若者が事件のことを知っていたとしたら――その時は、仕事も行かず、極限まで外出を控え、徹底的に他人との接触も避け、三ヶ月間、籠城してやる。

　今は島を出る期日が決まっているだけに耐えられる。
　
　私は深呼吸を一つして、インターフォンを押した。

　家の中でメロディーが流れ、中から男性の返事があった。パタパタと廊下を歩く音が聞こえた後、玄関は昔ながらの磨り硝子の引き戸だったから人影が見えた。髪型からも体型からも若そうだ。

　ドアが空くのに合わせ、頭を下げる。