この宿のセキュリティはどんなもんだろう。

　鍵は旧式だし、フロントもいい加減そうだ。見渡しても部屋に金庫もない。

　逃避行初日から資金を失っては目も当てられない。私はため息をついて大きな鞄を手に取った。ズシリと腕に紐が食い込み顔を歪める。

　商店街なら色んな店があるだろう。出歩くために都合のいい小さな鞄を買おうと決めた。さらに、下着類や替えの服も用意しておいた方がいいだろう。

　佐藤の用意したようなどんくさいものではなくて、もっとセンスのある今時の奴を買うのだ。

　それくらいのわがままを通さないと、この旅を続ける気持ちが維持できそうにもなかった。

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　逃避行を続けて1ヶ月弱。１１月に入っていたものの、比較的温かい日が続いていた。

　この頃になるとようやく鈴木博子（仮）にも慣れてきていた。

　今いる場所は、この辺りの地方都市だ。辛うじて高層ビルと呼べる建物が1つ2つ駅前に建ち、カラオケ、居酒屋などの集まる繁華街も存在する。

　滞在日数は4日。今日はその２日目。映画館で映画を１本見て、昼食は映画館の中にあるファストフード店でハンバーガーのセットを食べた。