だけど泣き叫ぶ私に向かって、その人は言ったのだ。
「人違いですよ」
とても落ち着いた声で。
無表情のまま、涙を流す私の目を見て。
「僕は、あなたの探しているお友達じゃないです。すみません」
そう言って、謝まられてしまった。
「…嘘」
「嘘じゃないです」
「違う!海斗でしょう?どうして嘘つくの?」
「ちょっ、夕海!確かに似てるけど、違うんだって。海斗じゃない。彼だってそう言ってる」
「嫌!何で?どうしてわからないの?海斗だよ?」
駿の腕の中で必死に暴れていると、買ったかき氷も受け取らないまま女の人は海斗の腕を引き人混みを進んでいく。
「待って!海斗!離してよ、駿!お願い、離して…」
泣きながらそう言ったのに。
駿の腕は緩むことなく私を抱きしめ抑え続けた。
「ちょっと駿!何してるの!」
「おい、何があった?」
いつのまにか目立つ騒ぎになっていた私たちの周囲には人だかりが出来ていて、その隙間をかき分けるように現れた詩織と陽ちゃんの姿に、私は思い切り叫んだ。
「海斗が!海斗がいたの!お願い、駿を離して!」
二人は、駿のことを止めてくれると思った。
きつく抑えられた腕から抜けだせるよう、助けてくれると思っていた。