気が付けば、あれからもう三年と言われるようになった。
でも、違うと思う。
まだ三年。たった三年だ。
今でも、眠りにつく前は願う。
どうか、この今が夢であってほしいと。
目が覚めたら、いつも海斗が隣にいたあの頃に…戻っていてほしいと。
そう願わない日は、あの日から一度もなかった。
「夕海!」
「見て、夕海の好きなベビーカステラあるよ!」
「射的もあるぞ」
いつのまにか私の両隣まで進んでいた詩織たちは、前後左右忙しそうに視線を動かしながらボーっとしていた私の腕をぐいぐい引いて明るく声を弾ませる。
人混みで溢れかえる、夏祭りの川沿いの道。
あの時ここで海斗の手を離してしまったことや、地獄のようだったあの夏を思い出すことが怖くて、あれ以来はずっと…ここに来ることは出来なかった。
でも、三年という月日と周囲の人たちの支えが立ち止まっていたままの私の背中を押してくれたんだと思う。
海斗の笑顔を最後に見たこの場所で、手を合わせたい。
塞ぎ込んでいた気持ちが、ようやくそんなふうに前を向こうとしていた…はずだった。