普段なら、あまりこういうことはない。
こんな風に止まったりすることもなく、お互い自転車を走らせたまま、じゃあねと分かれてきた。
「どしたの?駿」
いつもと違う駿の行動を不思議に思いながら、そう聞いた。
すると視線をこちらに向けた駿は、私を真っ直ぐ見つめて。
「もう、いいかな」
と、突然そんな言葉を口にした。
「な、何がいいの?」
言葉の意味が全然わからなくて、すぐにそう聞き返した。
「三年」
「えっ?」
「今日で三年。海斗がいなくなって、もう三年が経った」
「…うん」
「だからもう、海斗のことは忘れないか?」
「っ?な、なんでそんなこと…」
予想外の言葉と、やけに落ち着いた声とその表情に、戸惑いを隠せず言葉に詰まった。