きっかけは、些細なことだった。
「どっちがよりわかりやすく丁寧に出来るか、出来た方には大好きなカキ氷を毎日食べさせてやる」
お互いのお父さんが揃って口にした、そんな馬鹿げた煽り。
今思い返すと、そんな口車に乗った私たちも馬鹿だったと思うけれど、まだ幼かった私たちはほいほいと好物に釣られてしまい「よし!」とやる気を出したのだった。
毎晩どちらかの家の庭で星の観察をしつつ、昼間は学校の図書館で星座の本を読み漁り、気付けば二人して星を見ることや調べることに夢中になっていた。
「デスブにベガにアルタイル…本当懐かしい。あれって何年前だったのかなぁ。結局あれがきっかけで、夏が来たら何故か毎年のように夏の大三角を見るようになってたんだよね」
夏を振り返れば、思い出す。
あれからどの夏も、毎年海斗と星を探してた。
いつだって、海斗と……
「っていうかさ、明後日プール行かない?」
思い出に浸っていたその時、突然そう言って話を変えてきたのは隣にいた駿だった。