その夜は、長かった。
親たち全員が揃うのは久しぶりだったということもあり、花火が終わっても駐車場での宴は続き、私たち子供も冷えたラムネを片手にそれに付き合っていた。


「陽太。ビール切れたから瀬田さんとこで買ってきてくれないか」
「えーっ、自分で行けよ」
「アイスも買ってきていいから。ほら、行ってこい」
「アイスって俺を何歳だと思ってんだよ。なぁ?夕海」


いい具合に頬を赤く染めた陽太のお父さんと、眉間にしわを寄せている陽太の顔。

そんな二人の顔を交互に見て、私は口を開く。


「本当、陽ちゃんおじさんに似てきたよね」
「はぁ?やめてくれよ」
「なんだその言い方は。親子なんだから似てて当然…」
「はいはい、わかったわかった。瀬田まで行ってくるから黙って」
「おい、なんだ黙ってって」


ムッとするおじさんをさらっと無視した陽太は立ち上がって私に言う。


「夕海、おまえもついてこい」
「えっ、私も?」
「アイス、好きなの選ばせてやるからさ」
「ふふっ、はいはい」


何歳なのよって、心の中で思いつつも椅子から立ち上がり、陽太の従兄弟である子供たちと花火をしている駿たちを残し、陽太と二人で瀬田に向かった。

瀬田というのは瀬田酒店という酒屋さんで、歩いて五分くらいの場所にある。

未成年にお酒を買いに行かせるなんて正しい大人がすることではないけれど、瀬田の店主であるアキラじいちゃんは陽太のお父さんと長い付き合いで、昔から夏祭りになればこんな風に私たちがおつかいに出向くこともあり、普通に買うことが出来る。


とはいえ、幼かった私たちももう十九歳になった。


「お、陽太と夕海も酒飲むようになったか?」


だから久しぶりに顔を合わせたアキラじいちゃんは私たちの顔を見るなりそんなことを口にして。


「違う違う。親父たちの酒だよ。冷えてるビール、大きいやつで十本くらいもらえる?」
「ははっ、そうか。ちょっと待ってな」


陽太の言葉を聞くと、懐かしい笑顔で袋にビールを入れ始めた。