「おー!やっと来たな!」
川沿いから細い小道を降りて駐車場にたどり着くと、陽ちゃんのお父さんが手を振って私たちを迎えてくれた。
混雑する夏祭り会場の河川敷とは違って、ここは昔から特別な空間だった。
広い駐車場には花火をゆっくり見られるようにとアウトドア用のテーブルや椅子が並べられ、小学生の時に陽ちゃんと友達になってからは毎年のようにここに招いてもらっている。
「夕海、遅かったじゃない。もうお母さん達、はじめちゃってるわよ」
「いろいろ持ってきてるから、あんた達適当に座って食べちゃって」
その声に視線を向けると、缶ビールを片手に頬を赤くしたお母さん達の姿があった。
「もう花火始まるんじゃないか?」
「あぁ。そうだ、クーラーボックスの中の氷ってまだあったかな?」
そして、別の方向から聞こえてきたそんな会話に目を向ければ、私たち四人のお父さんと海斗のお父さんが揃ってテーブルを囲んでいた。
家族で招いてもらうようになって何年目になるのかも覚えていないけれど。
小学校の低学年くらいから、毎年夏になればこんな光景を目にしてきた。
花火がよく見える場所に、運送会社を経営している陽ちゃんのお父さん。
その特権をこうして一緒に使わせてもらえるのは、私たちが仲良しなのはもちろんのこと、親同士も本当に仲が良かったからだ。