そのあだ名で呼ばれたのは、子どもの頃友達にからかわれて以来だ。
「おむすび、か……。悪くないあだ名だな」
「一心さんまで!?」
「ちなみに、おにぎりというのはどんな形でも良いが、おむすびは三角形のものを指す呼び方なんだ。先日君に作ったのはおむすびだな。諸説あるみたいだが」
そうなのか、知らなかった。一心さんの援護射撃を受けて、響さんが満足したようにニヤリと笑う。
「ふん、良く言えば素朴なあなたにぴったりじゃない。おむすびちゃん」
良く言えば、ということは、悪く言えば色気がないということなのだろうか。なんとなく自分でも自覚していたことだったので、若干胸にぐさっと刺さった。
「まあとにかく、だ」
混乱してぼうっと立ち尽くしたままの私に、一心さんは手を差し出してきた。
「明日からよろしく頼む、おむすび」
おずおずと、その手を握る。大きくて、骨ばっていて、仕事をしている男の人の手だった。
あたたかくなり始めた三月の風が、私たちの間を通り過ぎる。
不安なことはいろいろあるけれど、一心さんのおいしいごはんがあればきっとやっていけると思うから。
持田結、愛称おむすび。まだまだ新米のおむすびですが、明日から『こころ食堂』での新しい毎日が始まります。
「おむすび、か……。悪くないあだ名だな」
「一心さんまで!?」
「ちなみに、おにぎりというのはどんな形でも良いが、おむすびは三角形のものを指す呼び方なんだ。先日君に作ったのはおむすびだな。諸説あるみたいだが」
そうなのか、知らなかった。一心さんの援護射撃を受けて、響さんが満足したようにニヤリと笑う。
「ふん、良く言えば素朴なあなたにぴったりじゃない。おむすびちゃん」
良く言えば、ということは、悪く言えば色気がないということなのだろうか。なんとなく自分でも自覚していたことだったので、若干胸にぐさっと刺さった。
「まあとにかく、だ」
混乱してぼうっと立ち尽くしたままの私に、一心さんは手を差し出してきた。
「明日からよろしく頼む、おむすび」
おずおずと、その手を握る。大きくて、骨ばっていて、仕事をしている男の人の手だった。
あたたかくなり始めた三月の風が、私たちの間を通り過ぎる。
不安なことはいろいろあるけれど、一心さんのおいしいごはんがあればきっとやっていけると思うから。
持田結、愛称おむすび。まだまだ新米のおむすびですが、明日から『こころ食堂』での新しい毎日が始まります。



