こころ食堂のおもいで御飯~仲直りの変わり親子丼~

「ひ、響さん、どうしたんですか?」

 肩で息をして、額に血管を浮き出させた響さんは、すごい形相だった。つかつかと私の前までやってきて、がしっと肩をつかまれる。

「ひっ」
「あ、あなた……。まさかここで働く気じゃないでしょうね?」

 目が、すわっている。ドスのきいた声でオネエ言葉というのは案外迫力があるものなんだなと初めて知った。

「ちょうど今その話をしていたところだ。持田さんには明日から来てもらうことになった」

 空気を読まず、というか響さんには構わず、一心さんはさらりと告げる。

「な、なんですってぇ!!」

 ムンクの『叫び』のようなポーズで絶叫する響さんを、私はどうしていいかわからず黙って見ていた。

「若い女と一心ちゃんが同じ屋根の下で……。ああっ、今までがおばちゃんだったからすっかり油断していたわ! 従業員募集の張り紙に、『男性または五十代以上の女性であること』って書き足しておけば良かった!」
「響……。さすがにそれは営業妨害で訴えるぞ」

 一心さんも、つっこむ場所が違うのでは。
 響さんは、きっ!と私をにらむと、びしっと人差し指を突きつける。

「あなたに一心ちゃんは渡さないからね! 持田結さん……いいえ、あなたなんて『おむすび』でじゅうぶんよ!!」
「お、おむすび……?」