大学の卒業式も終わり、就活も順調に進んでいる。でも、なんだかすっきりしない。あの日後ろ髪を引かれたまま、『こころ食堂』に大事なものを置いてきてしまったように思える。
もう一度行ってみれば何か分かるかも、と思い、就活の途中で『こころ食堂』に寄ってみた。だけど……。
「えっ、臨時休業……?」
お店の扉には筆で書かれた紙が貼ってあった。近くの壁には従業員募集のチラシもあるし、まさか一心さんに何かあったのだろうか。
仕方なく通りを引き返していると、『Bar HIBIKI』の入り口から、箒とちり取りを持った響さんが出てきた。今日は長めの前髪をオールバックにしていて、より大人っぽく見えた。
「あら? あなた……」
響さんも私に気付いて足を止めたので、お辞儀をする。
「響さん。お久しぶりです。先日はありがとうございました。あの……私のこと、覚えていますか?」
「当たり前じゃない。持田結さん、よね。倒れているあなたを運んで、なかなか衝撃的な身の上話まで聞かされちゃ、忘れろって言うほうが難しいわよね」
「そ、そうですよね」
響さんがいたずらっぽく笑う。一連の醜態を思い出して顔がかあっと熱くなってしまった。できれば、恥ずかしい部分だけ忘れて欲しいのだけど……。
「リクルートスーツも似合ってるわよ。就活は順調?」
「はい、おかげさまで。ちゃんと食事できるようになって、体調もだいぶ良くなりました」
「そうでしょうね。お肌、ぷりぷりしてるもの」
さすが、オネエは目ざとい。気を取り直して、肝心のことを質問することにした。
もう一度行ってみれば何か分かるかも、と思い、就活の途中で『こころ食堂』に寄ってみた。だけど……。
「えっ、臨時休業……?」
お店の扉には筆で書かれた紙が貼ってあった。近くの壁には従業員募集のチラシもあるし、まさか一心さんに何かあったのだろうか。
仕方なく通りを引き返していると、『Bar HIBIKI』の入り口から、箒とちり取りを持った響さんが出てきた。今日は長めの前髪をオールバックにしていて、より大人っぽく見えた。
「あら? あなた……」
響さんも私に気付いて足を止めたので、お辞儀をする。
「響さん。お久しぶりです。先日はありがとうございました。あの……私のこと、覚えていますか?」
「当たり前じゃない。持田結さん、よね。倒れているあなたを運んで、なかなか衝撃的な身の上話まで聞かされちゃ、忘れろって言うほうが難しいわよね」
「そ、そうですよね」
響さんがいたずらっぽく笑う。一連の醜態を思い出して顔がかあっと熱くなってしまった。できれば、恥ずかしい部分だけ忘れて欲しいのだけど……。
「リクルートスーツも似合ってるわよ。就活は順調?」
「はい、おかげさまで。ちゃんと食事できるようになって、体調もだいぶ良くなりました」
「そうでしょうね。お肌、ぷりぷりしてるもの」
さすが、オネエは目ざとい。気を取り直して、肝心のことを質問することにした。



