「でも、どうやっておばあちゃんの味にしたんですか?」
「味噌にみりんを混ぜてみた。君のおばあさんは塩分を気にしているみたいだったから、甘い調味料を味噌に混ぜて塩分を減らしていたのではないかと思ったんだ」
「みりん……」
台所でおにぎりを作る、おばあちゃんの後ろ姿を思い出す。私が「おばあちゃん、まあだ?」と声をかけると、軽く振り返って「もう少しだからね」と返事をしてくれて。
そうだった。おばあちゃんが料理している手元は、私からは見えなかった。わからないようにこっそり、みりんを混ぜていたんだ。
「おばあちゃん、そんな工夫をしてくれていたんですね……」
感激している私の前で、一心さんは顔を引き締めた。
「俺のほうでも、ひとつ気になることがある」
「は、はい。なんでしょう」
「君はさっき、味オンチと言われて彼氏に振られた、と言ったな。でも、米の甘さを感じられる人間が味オンチなわけがない。君は彼氏に何を作ったんだ?」
「え……」
意外な言葉に、お茶の入った湯飲みを持ったまま固まってしまう。
「あたしも気になるわ。砂糖と塩を間違えたのに気付かなかった、なんてベタなオチじゃないわよね?」
響さんも身を乗り出してきて、私は説明せざるを得なくなってしまった。あまり思い出したくないあの日の記憶を、頭の中から引っ張り出す。
「味噌にみりんを混ぜてみた。君のおばあさんは塩分を気にしているみたいだったから、甘い調味料を味噌に混ぜて塩分を減らしていたのではないかと思ったんだ」
「みりん……」
台所でおにぎりを作る、おばあちゃんの後ろ姿を思い出す。私が「おばあちゃん、まあだ?」と声をかけると、軽く振り返って「もう少しだからね」と返事をしてくれて。
そうだった。おばあちゃんが料理している手元は、私からは見えなかった。わからないようにこっそり、みりんを混ぜていたんだ。
「おばあちゃん、そんな工夫をしてくれていたんですね……」
感激している私の前で、一心さんは顔を引き締めた。
「俺のほうでも、ひとつ気になることがある」
「は、はい。なんでしょう」
「君はさっき、味オンチと言われて彼氏に振られた、と言ったな。でも、米の甘さを感じられる人間が味オンチなわけがない。君は彼氏に何を作ったんだ?」
「え……」
意外な言葉に、お茶の入った湯飲みを持ったまま固まってしまう。
「あたしも気になるわ。砂糖と塩を間違えたのに気付かなかった、なんてベタなオチじゃないわよね?」
響さんも身を乗り出してきて、私は説明せざるを得なくなってしまった。あまり思い出したくないあの日の記憶を、頭の中から引っ張り出す。



