そして、小さい頃はわからなかったおばあちゃんの愛情にも、気付くことができた。
 そういえばおばあちゃんは、野菜も地元の直売所で買っていた。素材を大事にして、毎日のご飯を作ってくれていたんだ。

「じゃあ、おばあさまのおにぎりそっくりの味だったってことね」
「はい。……あっでも、そういえば」

 食べている間に、思い出したことがあった。

「何か足りないところはあったか?」
「いえ、大したことじゃないんですけど……。おばあちゃんの味噌おにぎりはもっと甘かったなあって思って」
「甘かった?」
「はい。最初はこんな感じだったんですけど、私が頻繁に味噌おにぎりをねだるようになったら、ふつうのおにぎりより塩分が多いから心配って言い出して……。その後、味がちょっと変わったんです。見た目は変わらないんですけど」
「減塩味噌でも使っていたのかしら。でも、お味噌を変えただけでそこまで甘くなる?」
「そうですよね……」
「いや……、もしかしたら」

 一心さんはしばし考え込んだあと、真剣な顔で私に向き直った。

「もうひとつ、食べられそうか? 試してみたいことがある」
「あっはい、大丈夫そうです」

 私が返事をすると、一心さんは再び厨房に姿を消し、やがてさっきと同じようにおにぎりの載ったお皿を持って出て来た。

「お待たせしました。どうぞ」

 私の前に置かれたのは、見た目はさっきとまったく同じ味噌おにぎり……に見える。

「食べてみなさいよ」
「は、はい」

 響さんにうながされ、おにぎりを両手で持つ。今度はがぶっと大きくひとくち。

 ――おばあちゃんの味と同じだ。そう思った瞬間、何か言うより先に目からこぼれるものがあった。