新年が明けて、冬休みが終わったころ。私の耳に飛び込んできたのは、内定先の企業が倒産したという信じられないニュースだった。

 つらくてしんどい就職活動を乗り越えて、内定が決まった旅行会社。花形の職業だし、家族も友達も「結(むすび)、良かったね」ってお祝いしてくれた。あのときの私はきっと、二十二年の人生で一番、喜びに満ち溢れていた。
 卒業論文も書き上げて、あとは卒業を待つばかりだったのに。大学四年のこんな時期に就職浪人が決まってしまうなんて。

 悪い出来事は、それだけじゃない。二年間付き合った彼氏に振られてしまったのだ。

 銀行に就職が決まった彼氏とは一緒に過ごす時間も増え、その日は私のアパートで料理を振る舞っていた。
 料理下手な私だけれど、その日のメニューはうまくできた。
 ご飯と焼き魚は失敗しようがないけれど、彼氏の好物だからと練習を重ねたお味噌汁だって、なかなかの味だった。
 だけど、そのお味噌汁をひとくち飲んだ彼氏は、私にこう言った。

『まずい。俺、料理下手な女の子ってダメなんだよね。別れよう』