その言葉と同時に、閉まり切ったはずの部屋に風が吹き荒れる。

目を開くことも困難な中、薄目を開けてみると、優ちゃんの体から眩しい光と春のように暖かい風が生まれていた。

 光に包まれた優ちゃんも驚きながら、スッと頭に手を伸ばした。

すると、その手に触れた漆黒の角は、砂のごとく風に乗って消えていく。

 優ちゃんはまるで、呪いが溶けた女神のように綺麗で美しかった。

今までついていた床から足が離れ、天上ギリギリまで浮上する。

「天使が、天国に帰ってきてもいいって。希衣のおかげだよ。本当にありがとう」

 待って、とは言えなかった。けれど、体が気持ちを表すように立ち上がり、必死で背伸びをする。

「ううん。お礼を言うのは私の方だよ。優ちゃん、私、優ちゃんに出会えてよかった。優ちゃんと友達になれてよかった。優ちゃん……私に夢をくれて、ありがとう」

 泣きたくなんかないのに。きっとこれが本当に最期になるのに。嫌だ、涙で視界を曇らせたくない、笑顔でお別れしたい、なのに。

必死で笑顔を作っても、何度涙を振り払っても、心の奥からあふれてきて、止まらなかった。

「そんなに泣かないでよー。あたしまで……涙が出てくるじゃない……。大丈夫、あたしはずっと、見守ってるから。書籍化したら、あたしの仏壇にでも飾ってね」

 その言葉を最後に、優ちゃんは光と風に包まれて、空気に溶けていった。

 部屋には再び静けさが戻る。ただ今までとは違う、どこか暖かな空気で満ちていた。

「優ちゃん、ありがとう。私、頑張るからね」

 再び私は椅子に腰かける。真っ黒になった画面に色を入れ、キーボードを叩いた。

 文字上に溢れる私の物語(せかい)。
いつかそれが、世に出ることを願って───。