そんな雄大に、琴葉は「あの」と尋ねる。

「もしよろしければお取り置きとか、別の日にご予約とかもできますよ。」

せっかくシュガートップを買い求めに来てくれたのに、お目当てのものがないなんて残念に違いないだろう。

「少量でも?」

「はい、もちろんです!パンおひとつから承ります。」

実際、常連客である近所の年配の女性は毎日のようにコッペパンを2つ取り置きで買いに来る。
きめ細やかなサービスは、個人店ならではだ。

「お店は何時まで?」

「19時まで営業しております。」

雄大は営業時間を確認すると、自分の今日の予定と擦り合わせる。
打ち合わせがひとつ入っているだけなので、19時までにはもう一度ここに来られるだろう。

「じゃあシュガー…なんだっけ?」

「ふふ、シュガートップです。」

「2つ取り置きしてもらえますか。時間はちょっと曖昧だけど、19時までには来ます。」

「はい、かしこまりました。」

琴葉はメモ用紙とペンを取り出し、商品に付けられているPOPと同じく可愛らしい字で“シュガートップ2つ”と書いた。

「それでは、お客様のお名前とお電話番号をお伺いしてもよろしいですか。」

雄大は琴葉の可愛らしい字の下に、それとは正反対な無骨な字で名前と電話番号を書いた。