琴葉が目を覚ますとすでに部屋は明るく、そのことにびっくりして飛び起きた。
普段はまだ薄暗い時間に起きて、開店の準備に取りかかっているのだ。

慌ててリビングへ行くと、雄大がキッチンに立っていた。

「おはよう。」

「雄くん、寝過ごしちゃった!」

慌てる琴葉に対して雄大はずいぶんとのんびりしながら、琴葉を無理矢理ダイニングチェアに座らせる。

「琴葉は今日は休み。」

「え?今日は定休日じゃないよ。」

「うん、でも休み。」

「いやいや、ダメだよ。」

「ダメじゃないの。もう臨時休業の貼り紙は出したから。」

雄大の言葉に琴葉は一瞬言葉を失ってから、叫ぶように抗議する。

「な、なんでそんな勝手なことするの!」

泣き出しそうなくらい瞳を揺らしているのに、今にも雄大に飛び掛からんばかりに詰め寄る。
そんな琴葉の勢いを軽くいなしながら、雄大はマグカップを琴葉の前にコトリと置いた。

「琴葉、ちょっと話をしよう。」

「…?」

「俺も今日は休みを取った。」

「どういうこと?」

「とりあえず、朝食にしようか。」

訳がわからない琴葉は不信感を雄大にぶつけるが、雄大が琴葉の寝起きの乱れた髪の毛を優しく直してやると、「うん」としぶしぶながら素直に従った。