琴葉はしばらく抱きしめられたまま、雄大はその通りにそれ以上何もせず、ただ静かに彼の温もりを感じていた。
温かくて幸せで目を閉じたらそのまま寝てしまいそうだ。

明日が休みならどんなにいいだろう。
そんな風に考えて、いや、明日もお互い仕事じゃないかと琴葉は我に返る。
雄大はこの後自宅に帰らなくてはいけないのだ。
遅くなってしまっては睡眠時間が削られ、それこそ疲労に繋がる。

「そういえば雄くんって家までどれくらいかかるの?」

いつも雄大が琴葉の元へ通うばかりで、琴葉は雄大がどこに住んでいるのか知らなかった。
車で来て車で帰って行くことしか把握していない。

「渋滞がなければ1時間以内で着くよ。」

「えっ!1時間?!」

「1時間以内。スムーズに行けば3、40分かな。」

「えーーー。」

思いの外遠くて、琴葉はため息混じりに呻いた。

疲れて帰って来て、それからまた1時間も運転して自宅へ戻るなんて、体力がいくらあっても足りないくらいだ。