路地を曲がるとすぐにminamiだ。
ガラス張りで明るい入口から、すぐに琴葉と社長である父の姿が見えた。
何かを話している様子が伺える。
ふいに琴葉が目元に手をやり涙を拭う仕草をして、雄大は頭に血がのぼった。

雄大は力いっぱい入口を開けると、思い切り琴葉を自分の胸に引き寄せる。

「きゃあっ。」

「琴葉!大丈夫か?何を言われた?」

突然の出来事に琴葉は目をぱちくりさせながら雄大を見上げる。
その目元にはやはり涙の跡があり、雄大は優しく拭うと同時に父親に向かって叫んだ。

「親父、琴葉に何をしたんだ!」

その今にも飛びかかろうとせんばかりの剣幕に、今度は琴葉が焦って雄大にしがみつく。

「待って、違うんです。嬉しくて涙が。」

「…は?」

訳がわからず、雄大はすっとんきょうな声を上げる。
別に飛びかかる気はなかったが、琴葉が必死に雄大にしがみついてくるので、とりあえず優しく琴葉に触れた。

「嬉しい?」

「はいっ!」

満面の笑みで答える琴葉に、雄大は更に混乱して眉間にシワを寄せる。

「やれやれ、うちの息子はまだまだ子どもだな。次期社長ともあろうものが冷静に物事を判断しないなんて情けない。」

ひとつ大きくため息をつきながら、社長は優しい眼差しを二人に向けた。