minamiの入口が開き、琴葉は元気よく挨拶をする。

「いらっしゃいませ。」

入ってきてのは高級そうなスーツを身に纏う男性だ。
男性は入ってくるなり、キョロキョロと店内を見回した。
初めての客はminamiの販売スタイルに驚くことが多く、よく店内を見回している。
だから、この男性もその類いかなと琴葉は思い、声をかけた。

「カウンターで注文するスタイルですので、お決まりになりましたらお声がけください。」

男性は琴葉を見ると、「懐かしいな」と呟いてカウンターへ近付く。
初めてじゃなかったのかなと思っていると、その男性は優しい声で尋ねた。

「君が琴葉さんかな?」

「はい。」

「はじめまして、早瀬と申します。雄大の父です。」

一瞬意味がわからなくて琴葉は固まったが、はっと我に返って慌てて頭を下げる。

「はっ、はじめまして。」

「雄大が世話になっているそうで。」

「いえいえいえ、いつもよくしていただいています。」

思いもよらない展開に、琴葉はテンパりそうになりながらも必死に頭をフル回転させ、失礼のない言葉で受け答えをする。
焦る琴葉に、雄大の父親は優しい笑みを称えながら、

「少し話をしてもいいだろうか?」

と尋ねた。
何事かと緊張しながらも、琴葉に断る理由などないので「はい」と頷づく。

タイミングがいいのか悪いのか、ちょうど客の入りが途切れている、そんな時間帯だった。