海外案件でのトラブルが勃発し、雄大は急な出張をせざるを得なくなった。
日本を発つ前に琴葉に電話をしたが出ない。
飛行機の時間も差し迫っていたので、雄大はしかたなしにメッセージを入れておいた。

現地について慌ただしくバタバタとしてようやくホテルで一息ついたときに、琴葉からのメッセージを確認して雄大は思わず声を上げた。

「なんだこれは。」

まるで別れの挨拶のようなメッセージに、雄大はとたんに心配になる。
琴葉に何かあったのではなかろうか。
すぐに本人に問いただしたかったが、時差の関係上電話をかけることを躊躇った。
さすがに迷惑になるだろうし、翌日の仕事に響いては本末転倒だ。

悶々とした気持ちのまま結局連絡を取る機会を失い、それでも雄大は粛々と仕事を終えて帰国の途についた。

空港から直接琴葉のところに向かおうと意気込んでいた雄大だったが、出口には藤原が出迎えていた。

「お疲れ様です。お迎えに上がりました。」

「迎えは頼んでないけど?」

顔をしかめる雄大の嫌味もどこ吹く風の藤原は、そのまま雄大に有無を言わせず会社へ連れて行った。