そんな雄大の態度に、杏奈は不満げに言う。
「最近雄大冷たいよね。いつも深夜まで働いていたのに早く帰ってるみたいだし。何かあるの?」
「…何もないよ。」
「嘘。minamiに通ってるの知ってるんだからね。そんなにあの店のパンが好き?」
「…………。」
杏奈は雄大に詰め寄るが、雄大はふいと目をそらした。
杏奈にはその態度さえも気に入らず、冷ややかな声色で言う。
「それとも、あの店員を好きになったとか?」
「杏奈には関係ないだろ。」
「関係あるわよ!だって私は雄大のこと…。」
杏奈が前のめりになって詰め寄ろうとしたところで、雄大がそれを手で制す。
「いい加減にしろ。お前、何しにここに来たんだよ?仕事する気ないなら帰れ。」
同級生であり同期の二人だが、役職的には圧倒的に雄大が上だ。
雄大の一声で杏奈をプロジェクトから外すことだって造作ない。
だがそれをしないのは、二人とも仕事に関しては誇りをもって取り組んでいるしお互いを認めているからだ。
「バカにしないでよ。一流建築士舐めんな。」
杏奈は雄大に啖呵を切ると、ふんと一睨みして完全に仕事モードに切り替えた。