一瞬、俺も聞こえないふりをしてしまおうかと思ったけど、それはあまりに失礼かと足を止めた。

「はいよ。こんなんで申しわけねぇけども」

 おばあさんはそう言って小さな何かを手渡してきた。

「彩蓮!これ」

 俺はおばあさんから受け取った小さなものを彩蓮に渡す。

「わあ!懐かしい!」

 おばあさんがくれた小さなもの。

 それは昔良く食べた小さな容器に入ったヨーグルトのようなお菓子だった。

「なんか賞味期限が近いからってくれたんだ」

 言いながら俺の分ごと彩蓮に手渡す。

「あ、冷たい」

 そう、冷たいのだ。

 俺が小さいこと食べたのは常温だった。

 だけどおばあさんがくれたのは冷蔵庫でよく冷されたそれだ。