一切の風すら吹かなくて、静かだった。
くすんだ水色のなかを漂う白い雲。
水色の色が濃くなっているところでは赤みのさした紫の雲が浮かんでいる。
雲には影ができていて、白も紫も所々黒い。
宇宙じゃなくても、地球からでも、こうやって神秘なものを見れるんだなぁと。
自然ってすごいなぁと。
引かない暑さと途切れることなく聞こえる蝉の声をBGMにしばらく歩くと昼間通った駄菓子屋さんが見えてきた。
「成流は何味にする?」
目的の駄菓子屋まで後わずかというところで彩蓮は振り返り、俺に声をかけてきた。
「あれって全部味は同じだろ?なら俺は普通にいちごでいいかな」
「あー!そういうこと言っちゃうの?成流ってば風流じゃないなー。視覚から入る味って言うのも結構大事じゃない?」