「別に夏休みは始まったばっかりだし今日じゃなくていいよ?」

「いや、行こう。俺も食いたい」

「そういう事なら!」

彩蓮は嬉しいと言わんばかりにぱっぱと先へ行ってしまう。

「はぁ……」

でも、それだけじゃないのだろう。

何故か分からないが、自分でも気づくことが出来なくて彩蓮に見られてしまったが、どうしてか俺は涙を流していた。

ほんの一瞬だけ。

一瞬だとしても唐突に涙を流した俺に、戸惑ったのか気を使ってくれたのか、彩蓮は振り返ることなく俺を置いていく。

戸惑ったにしろ、気を使ってくれたにせよ、こんな意味不明な自分を見られたことに恥ずかしさで埋まりたいと思った。

まあ、実際に埋もれてしまえる訳もなく、俺は微妙な距離感を開けたまま彩蓮の後を付いて行った。